学会概要

研究会,学会の歴史

「産婦人科手術No.1」巻頭言より

産婦人科医にとって手術は診療上極めて重要な部分を占めており,いろいろ検討すべき問題は数多いと思う.一方,年中季節を問わず学会,研究会が数多く開かれているにもかかわらず,手術に関する情報交換の場が皆無に等しかった.手術の進歩は単に経験を積むだけでは十分でなく,常に創意と工夫が必要であり,それぞれの情報の交換によって効率のよい発展を遂げることができるし,より良い医療を患者に提供できるものである.

この度「日本産婦人科手術研究会」が発足するに当たり,これまでの歩みを振り返ってみたいと思う.すでに述べたように産婦人科医にとって日常不可欠の業務として手術がある現状から,全国レベルでの情報交換の場を作る必要性を日頃から考えていた.近畿地方には以前より四葉会という会があった.故小倉知治先生や下村虎男先生などが中心となってあちこちの病院の産婦人科手術を見学し,ディスカッションする勉強グループであった(現在も存続).そこで両先生に相談したところ,結構なことだということで早速研究会設立に向けて作業を開始したのが昭和53年1月のことであった.同年5月故小倉知治先生を発起人代表とし,下村虎男,野田起一郎,山辺徹の各先生と私が発起人となり,さらに全国で31名の世話人をお願いし,研究会が創設され事務局を岡山大学産婦人科教室に置くこととなった.同年8月,9月,11月と会合を重ね細部の打合せを行い,研究会の名称も「産婦人科手術研究会」と決まり,12月10日(日曜日)第1回研究会が故小倉知治会長のもとに大阪で行われた.メインテーマは「腹式単純子宮全摘術」を取り上げ,大変盛会裡に開催された.当日の世話人会の席で全国レベルでの運営にするために,発起人会を解散し,新たに故小倉知治,下村虎男,坂元正一,杉山四郎,蜂屋祥一,野田起一郎,山辺徹の諸先生方と関場の8名が幹事として研究会の運営に当たることが決まった.その後,約10年幹事の交代などもあったが,東京,大阪と交互に毎年盛大に開催されてきた.昭和63年の第11回までの歴代会長とメインテーマは表のごとくで,いずれも会員のニーズに十分応えてきたものと思われる.

さて,全国レベルで広く手術に関する諸問題について学会形式を避け,ベテランもフレッシュマンも気軽に意見の交換ができることをモットーとして発足したこの産婦人科研究会も,今回で12回を重ねることとなった.その間,テーマも臨床医の身近にあるものを取り上げるように心掛け,演題公募にも統計などのスライドは極力避け,手術術式,実施上の技法,使用器具に関する工夫,アイデアなど,まさに直接手術に関する演題を募集するように努め,誰もが自由に発言できる雰囲気を保つことを基本原則として運営されてきたことは会員に大変歓迎された.しかし,この特徴を維持するためには会員が多くなりすぎることは好ましくないという半面もあり,セミ・クローズドの性格を持たざるを得なかった.

しかし,この研究会に強い関心を寄せる産婦人科医は多く,いつまでも現状でいくことは好ましくないとの判断から,平成元年より学会として発足し,名称も「日本産婦人科手術研究会」としてすべての人に開かれた会として出発することになった.学術集会以外に会誌の発行もその事業に組み込まれた.この会が従来のようにいつまでも気がねなく自由に意見の交換ができる会として会員のニーズに応えていくことを切に希望するものである.


1990年3月
日本産婦人科手術研究会理事長 関場 香


日本産婦人科手術研究会のあゆみ

開催地会 場参加人数会長主題
11978大阪科学技術センター150名小倉知治腹式子宮全摘術について
21979東京日本都市センター273名坂元正一腟式子宮全摘術について
31980大阪ニュー大阪ホテル220名下村虎男卵巣の手術
41981東京全共連ビル253名中山徹也子宮脱の手術について
51982大阪ロイヤルNBC会館298名関場 香帝王切開術について
61983東京東條会館303名蜂屋祥一新しい手術材料,手術器具および手術術式の新工夫
71984大阪新朝日ビルSBAホール323名野田起一郎腹式単純子宮全摘術に関する諸工夫
81985東京プレスセンターホテル237名竹内正七産婦人科手術における尿路系合併症の予防と治療
91986大阪ロイヤルNBC会館304名須川 佶産婦人科領域における機能再建手術
10 1987 東京東條会館335名橋本正淑①準広汎性子宮全摘出術
②腟式子宮全摘出術
11 1988 大阪国際交流センター 360名 藤原敏郎①大動脈リンパ節廓清
②皮膚切開縫合の形成外科的手技
12 1989 東京有楽町朝日ホール 344名 水野正彦①進行卵巣癌,再発卵巣癌の手術
②奇形子宮の手術
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